天河流動縁起


はじめに

 密教の金剛界マンダラ/胎蔵界マンダラ。チベットの砂マンダラ。神道の言魂マンダラ/参詣マンダラ。占星術の星マンダラ……。

 この世に伝え残されているマンダラは数限りないが、マンダラと言われれば円形/方形の区別なしに、様々な肖像/象徴の満載された極彩色のマンダラを、誰もが想像するに違いない。

 肖像/象徴/象形/色彩。これらには当然意味があり、重要な役目を担っているのは確かだが、マンダラ本来の意義からすれば、各位は修養過程の補佐的な依り代であり、マンダラの中心に修養者を導く軌道である。

 マンダラを対象とした修養では、中心こそが法城の場なのであるから。

 ところがマンダラの本義というものは、実はマンダラの表層上の中心にあるのではない。いや、中心にいたるだけではマンダラの本義を発揮することができない。と言ったほうが正しいであろう。

 マンダラの本義。それは修養者をマンダラの外にも脇にも中心にもとどめ置くことなく、中心のさらに奥にある本眼(マンダラの本質)を開眼させ、実質化させてこそ初めて発揮される。

 マンダラを修行の対象とするのではなく、修養者がマンダラと一体となり、隠された本眼をみずから開眼させることで、表層上には決して描くことのできない本質を感得するのである。

 本書は、冒頭に添付した神密マンダラを活用して、マンダラの本質(本書では神という実質)を感得する目的で書かれた。

 したがって読み進むごとに、これまでの各人の修養の軌道補正をおこない、最終的には読者である修養者自身が、二次元に描かれたマンダラを肉体上で三次元化して、マンダラの本質を感得する構成になっている。

第T部/天河流動縁起では、マンダラの本眼が開眼した実際を、著者の個人的な体験を通していつわりなく綴った。これは本眼への軌道となるため、読者は自分自身の体験として読むことをすすめる。

第U部/天河流動考察では、天河流動を象徴的に考察しながら、マンダラを活用する神帰法= 神密道において、最低限必要な基本姿勢を著述した。

第V部/神密道の実践では、いよいよマンダラを活用した帰神法の実践方法を紹介するが、こ こでは修養者自身が、呼吸を通して“マンダラになる”ことで成果を得るため、これ以降は読者本人の修養度合いによって、その活用状況は異なることになる。

日々の修養を期待する。



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